晴屋で扱う酢について

甘さ、塩気、酸味、苦みと次第に複雑に、高度になっていく味覚の3番目にあるのが、酸味です。

酢は太古から最古の調味料として使われていました。

酒を作り、それをわざわざ置いて酢酸発酵させて時間と手間をかけて作る貴重品でした。

それだけに高価で誰でもが使えるものではありませんでした。

味に複雑な旨味を与え、疲労を回復させ、食べ物の日持ちをよくしてくれます。

主成分のクエン酸の他、さまざまな有機酸や有効成分が入っています。

近代になり工業化されて比較的簡単に作られるようになりましたが、今度はクエン酸だけの単純で刺激的な風味になり、かえって敬遠されることも多くなっています。

酢には不思議な力があって、味を中和させる働きがあります。

例えば塩を入れすぎたり、砂糖を多く入れて甘くなってしまったり、反対に辛さが強すぎた料理に、少量酢を加えると中和されて、バランスのとれた味になります。

また逆に、旨味が不足したり、何かの調味料が少なく味のバランスが悪い時に酢を加えると味が整い、美味しく食べることができます。

酢は味が足りない時にも、濃すぎる時にも働く、とても大事な調味料です。

分かるか、分からないか微妙な量の加減が大事ですし、質ももちろん吟味しなければなりません。

工業的に作った単純で刺激的な酢では、酸味が目立って味に深みは得られません。

また酢には殺菌作用もあるため、痛みにくくなって、日持ちもよくなります。

これは煮物だけではありません。刺身や肉、魚料理にも使える技術です。

蒲鉾や味付け数の子が一味も二味も美味しくなります。

質の良いお酢ならどれでもそれなりの効果がありますが、酢の個性である風味は当然違いがあります。

晴屋で一番売れている酢は、有機酢の老梅です。

リンゴ酢のような、日本酒でいえば大吟醸のような爽やかですっきりとした風味です。

決して出しゃばらない味なので和食にぴったりです。一番無難なのはこれでしょう。

もう少し旨味と複雑さを求めるのだったら、八芳酢がおすすめです。

リンゴ酢をベースにして、上等な利尻昆布とかつおの出しが入り、レモンでさらに風味付けしています。

これは関西の伝統の味の再現です。関東の明確な味と違い、関西特に京都では表に強いだしの風味がでるのを嫌います。

明確には分からないけれど、食べてみると違うのが、上品で上等なのです。

関西で使われる利尻昆布はまさにそれにぴったりの味で、存在は主張しませんが、他とは違う旨味があるのです。

そうした関西の美意識を体現しているのが八芳酢で、酢の物、寿司酢、ドレッシング、ピクルス、魚の下ごしらえ等なににでも使える万能の酢です。

近藤醸造の米酢は明確に酸っぱいお酢好きの人のためのお酢です。

アジア系の料理には不可欠ですし、加熱に使うにはこれくらいしっかり酸がないと味がへたります。

臨醐山黒酢は豊富な旨味と爽やかな風味を両立した稀有な酢です。

バルサミコ酢に近く、すっきりとフルーティーな風味で旨味も豊富です。

トマトとの相性は抜群で、どうしても旨味が足りないという時に重宝します。

晴屋が創業した40年前には自然食品業界の酢と言えば、飯尾醸造の富士酢でした。

米の風味にこだわるメーカーで、米の香りと言うよりは糠の風味を強く感じます。

そのため雑味を感じることが多く、いつの間にか売れなくなってしまいました。

関西に多くある酢の醸造所の中での個性の主張といえるのでしょうが、晴屋では過去の製品となってしまいました。

味を調和させ、素材の旨味を引き出し、身体の疲れを癒し、感覚をリフレッシュさせ、雑菌の繁殖を防いで日持ちをよくしてくれるスーパー調味料であるお酢。

酢と新たに出会い、楽しむ良い機会となればと思います。

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